お知らせ

絵本でパンドラの箱が開いた日

2月初旬の、とある会議室で開催された研修会での出来事でした。
机に一枚のA4の用紙が配られてきて、午前中の講義は自分史を振り返るという内容でした。
講師の先生が、デモモデルを前にして自分史の説明が始まったのです。
以前にも経験していたので、イメージは広がっていきました。
しかし、講師の先生が言われた一言に、思考が止まってしまいました。
「生まれたときお母さんはなんと言っていましたか?」
その一言「お母さんはなんと言っていたか?」が私の胸に鋭く刺さった感覚に陥りました。生まれたときの母の言葉!
甦ってくる。まるで今、聞いたかのように。
「こんなくちゃくちゃな子は要らない!どこか連れて行って!」と。
苦しい。胸が詰まる。この場から逃げ出したい。ローカに出ようかと考えました。しかし、なにかしらわからないけど居心地の良さも感じながら固まっていました。
そこには苦痛という時間が流れていました。
帰り道で考えることといえば、やはり生まれた時の私、そしてそれを見ている今の私。
母親からの「こんなくちゃくちゃな子は要らない!どこか連れて行って!」と言われているところを赤ちゃんである私と、現在の私が一緒に聞いている姿が脳裏に浮かんで消えません。
何の抵抗も出来ない赤ちゃんの私。どう行動することも出来ず、でもここにいたい!
これって、この気持ちって午前中と一緒だ!
そう思った時、エリイ先生にハグしていただいた手の暖かさが背中に甦ってきたのです。
そして、ああ~今までの環境の中、人間関係で嫌なことは沢山あり、職場を辞めたいとか離婚したいとか、でもずっと我慢してきたことを思い返していました。
そして、これはあの赤ちゃんの私が体験した苦しいけど我慢した、あの経験から得た人生の教訓だったと気づきました。
電車の中で背中の先生の手の暖かさを感じながら、流れる涙に身を任せていると降りる駅を間違えていまいました。
自宅に帰りあの時の赤ちゃんの私を癒してやりたいと思い、自己イメージ療法をしました。
生後間もない私に会いに行き、優しく、そして思いっきり抱っこして「苦しいね。だいじょうぶ!。一人じゃないよ。ずっと一緒だよ」と語りかけました。
その言葉は赤ちゃんの私が求めていた言葉でした。赤ちゃんの私は現在の私の腕の中ですやすや眠りました。
“ずっと一緒”の絵本の表紙を思い出しながら、赤ちゃんの私を眺めることで私自身も癒されていました。
或いはこの絵本を何回も読んでいるうちに心を開放する準備ができてきていたのかもしれません。
そして赤ちゃんの私から「お姉ちゃん助けてくれてありがとう。嬉しい。私頑張れる。大きくなったらお姉ちゃんに会いに行く」というメッセージをもらいました。
こうして、この絵本メンタリング協会主催のインストラクター研修で長い間蓋をしていた向き合いたくない自分の過去に出会いました。
お互いに成長し二人の私は統合しました。
“ずっと一緒”の絵本は優しいタッチで子供の成長を見守っていく絵本です。
私たちが言葉として話していることは実は多くは相手に伝わっていません。
相手は話されている方の声のトーンとか態度とかの非言語からのメッセージを受けるといわれています。
同じ絵本を読んでも受け取り方はそれぞれです。
しかし絵本は肯定的に書かれていますので肯定的メッセージを受け取れます。
この絵本の講習会で母親から受け取った否定的感情を理解するのに長い月日がかかりました。
まさに人生の原点でした。
長年蓋をしてきた過去の氷の上の雪が静かに溶けています。
絵本でパンドラの蓋が開いた日でした。
絵本と出会うことがなければ、嫌な思い出として否定的感情のままでした。
しかし絵本という選択肢を選んだ結果自己理解につながり、人生の再スタートを始めました。
ずっと一緒だよ

 

スリム・プラサーダム・ホールズ 文
アリスン・ブラウン 絵
俵万智 訳

絵本メンタリング協会

体験講座実施中

体験講座へのお申込みは個人申し込ページよりお願いします。